【国産大豆と海外産大豆の違い】品質や安全性、栄養価を徹底解説
みなさんは、おみそを買うときに食品表示を確認していますか?
スーパーで見かけるおみそのラベルを見てみると
大豆の原産地表示は(国産)、(アメリカ産)、(カナダ産)、(輸入)、産地表示なし、などさまざまです。
国産大豆と海外産大豆は、お味噌以外にも食品市場で広く利用されていますが、その味や栄養素、安全性には違いがあります。
今回は、国産大豆と海外産大豆の違い、それぞれの品質や安全性、輸入状況や遺伝子組み換えについて詳しく紹介します。
【最新】 国産大豆は希少?自給率はわずか「6%」
農林水産省によれば、最新のデータである令和4年度の大豆の国内需要は年間約390万㌧、国内生産量は23万㌧で、自給率はわずか6%です(概算)。
ただし、日本の大豆の需要のうち70%は搾油(大豆油)用として使われ、その大豆のほとんどが海外産大豆でまかなわれているため、食品用のみの自給率で見ると23%になります。
―グラフ「大豆の需要状況」
出典:農林水産省「大豆のホームページ」所収の「大豆をめぐる事情(令和6年3月版)」より
※「食品用」「国産」は、農林水産省 農産局 穀物課 が食糧需給表から算出した数値
【国産大豆使用率が低い】おみそ17%、豆乳19%!
日本は古くから大豆を食べ、さまざまな大豆加工品を作り出してきました。
その自給率が2割程度というのは少々頼りない数値といえますが、豆腐や納豆、おみそなどの製品別に原材料である大豆の国産比率を見てみましょう。
―グラフ「大豆の用途別需要動向イメージ図」
出典:「令和6年 大豆をめぐる事情(令和6年3月版)」農林水産省(大豆使用量、国産比率はヒアリングを基にした穀物課推計)
注:円の大きさは大豆使用量を表示、()内数値は左が国産使用量で右が全体使用量
海外産大豆はどの国からやってくるのか
現在、世界では約4憶トン近い大豆が生産されています。主な生産国はブラジル、米国、アルゼンチンです。
また、主な大豆輸出国は、ブラジル、アメリカです。
一方、大豆輸入国は中国で、世界の総輸入量の6割以上を占めています。
国産大豆は品質や安全性への期待も大きいのですが、9割以上は輸入に頼らざるをえないのが現状です。
主な輸入先は、米国産が約7割を占め、ブラジル、カナダと続きます。
出典:「令和6年 大豆をめぐる事情(令和6年3月版)」農林水産省
国産大豆と海外産大豆、栄養価や品質の違い
世界ではさまざまな種類の大豆が栽培されていますが、国内産と海外産の大豆に違いはあるのでしょうか?
産地や種類によって異なる大豆の栄養価や品質の違いについて見ていきましょう。
【栄養価の違い】国内産大豆はたんぱく質多め・脂質少なめ
ご存じの通り、大豆は健康と栄養面において重要な役割を果たしています。
たんぱく質、脂質の他にもカルシウム、ビタミンE、ビタミンB2、葉酸、カリウムなどのミネラル、食物繊維を豊富に含む一方、糖質は少なめです。
また、大豆たんぱく質には、人間にとって必要なアミノ酸20種類全てが含まれており、体の中で作り出すことができない必須アミノ酸9種類も豊富に含まれています。
国内産の大豆と外国産の大豆では、栄養価に以下の表のような違いがあります。
国産の大豆は、外国産よりもタンパク質量が高く、脂質が少ないため、血糖値や肥満が気になる人にもおすすめです。
また、イソフラボンが多く含まれており、更年期障害や骨粗しょう症などに効果があるとされています。
カルシウム・マグネシウム・鉄などのミネラルの総量を示す灰分(かいぶん)も海外産よりも多く含まれます。
大豆の 100g 中の栄養成分(皮を含む乾燥大豆)
国産 | アメリカ産 | 中国産 | |
エネルギー | 372 Kcal | 402 Kcal | 391 Kcal |
たんぱく質 | 33.8 g | 33.0 g | 32.8 g |
炭水化物 | 29.5 g | 28.8 g | 30.8 g |
脂質 | 19.7 g | 21.7 g | 19.5 g |
水分 | 12.4 g | 11.7 g | 12.5 g |
灰分 | 4.7 g | 4.8 g | 4.4 g |
文部科学省「日本食品標準成分表 2020年版(八訂)」より
【品質や安全性の違い】国産大豆は高品質で安心
続いて、品質と安全性について、比較していきましょう。
国産大豆は全国統一検査基準があり品質(外観)のブレが少ないため、大粒で形が揃っており食味も良く高品質な大豆が多いのが特徴です。
また、海外産に比べて輸送途中の品質劣化の影響が少ないため、品質を保ちやすいのも良い点です。
さらに、海外産大豆に対し「残留農薬が気になる」や「遺伝子組み換え原料は不安」などの理由から敬遠し、国産大豆に安心感を持つ人が多いでしょう。
しかし、残念ながら国産大豆は生産量が少ないため、海外産大豆の約2.5倍の価格になっています(2020年)。
国産大豆と海外産大豆の違い
国産大豆 | 海外産大豆 | 特徴 | |
価格 | ✕ | 〇 | 国産大豆は海外産大豆の約2.5倍(2020年) |
外観 | 〇 | ✕ | 国産大豆は大粒で大きさが揃っている |
生産量 | ✕ | 〇 | 国産大豆の自給率はわずか6% |
保管 | 〇 | ✕ | 国産大豆は海外産大豆に比べて輸送途中の品質劣化の影響が少ない |
安心・安全 | 〇 | ✕ | 国産大豆は産地の顔が見え、検査等級がある 海外産大豆は遺伝子組み換えのイメージ |
国産大豆使用!マルマン醸造の「ふるどの天然醸造みそ」 |
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年々増加する「遺伝子組み換え大豆」
国産・海外産大豆の違いがわかってきたところで、次は遺伝子組み換え大豆について見てみましょう。
2019年における世界の遺伝子組換え(GM)農作物の栽培面積は、約1億9千万ヘクタール(日本の農地面積の約43倍)で年々増加しています。
そのうち、主要な栽培作物は4品目であり、ダイズ(48%)、トウモロコシ(32%)、ワタ(14%)及びセイヨウナタネ(5%)です。
現在のところ、日本国内では遺伝子組換え作物は商業的には栽培されていませんが、輸入によりたくさんの遺伝子組換え作物が流通しているのが現状です。
出典:農林水産省「世界の遺伝子組換え農作物栽培状況(令和元年)」
【用語説明】
※遺伝子組換え:生物の細胞から取り出した有用な遺伝子を他の生物の細胞の遺伝子に組み入れ、新しい性質をもたせる技術のこと
大豆の約8割は「遺伝子組換え大豆」?
日本の大豆の国内自給率は6%で、残りの93%は米国、ブラジル、カナダ、中国からの輸入大豆であるということはすでにお伝えしました。
各国では遺伝子組み換え大豆の作付けが進められており、主要な輸入国である米国は9割以上の作付けが遺伝子組み換えの大豆となっています。
日本に搾油用や飼料用として輸入される大豆の大半は、遺伝子組み換え大豆の選別がされていません。
そのため、搾油用・飼料用大豆のほとんどが「遺伝子組み換え大豆」と推定されています。
つまり、この事実から考えると、日本で流通している大豆の約8割が遺伝子組み換えではないかと言われています。
遺伝子組換え食品の表示制度とは?
日本では、安全性が確認された遺伝子組換え作物とその加工食品について、食品表示基準に基づき、表示ルール「遺伝子組換え表示制度」が定められています。
遺伝子組換え食品の表示には、義務表示と任意表示(表示はしてもしなくても可)があります。
義務表示
日本で食品としての安全性が審査済みの遺伝子組換え作物が存在する農作物9種および、これらを原料とする33商品群の加工食品について、遺伝子組換え農産物を使用している場合に、「遺伝子組換え」等の義務表示が必要に なります。
・対象農作物9種
大豆(枝豆及び大豆もやし含む)、とうもろこし、ばれいしょ、なたね、綿実、アルファルファ、てん菜、パパイヤ、からしな
・加工食品33種(一部抜粋)
大豆(豆腐・油揚げ、おから、納豆、豆乳、みそ、大豆煮豆、きなこ等)
とうもろこし(コーンスナック菓子、コーンスターチ、ポップコーン、冷凍とうもろこし等)
ばれいしょ(ポテトスナック菓子等)
※食物油や醬油などは、最新技術によっても遺伝子組み換えDNA等が検出できないため、表示義務はありません(任意表示可)。
任意表示
遺伝子組換え農産物を使用していない場合は、遺伝子組換えに関する表示義務はありません。
ただし、「遺伝子組換えでない」等の任意表示が可能です。
表示制度の詳細は「遺伝子組換え表示制度(消費者庁)」をご覧ください。
お買い物の参考に!お味噌の遺伝子組換え食品表示
では、一例として、お味噌がどのように表示されるのか見てみましょう。
遺伝子組換え表示制度 「義務表示」 | |
表示例 | |
遺伝子組換え大豆を原材料とした場合 | 大豆(遺伝子組み換え)等 |
分別生産流通管理をせず 遺伝子組換え大豆と非遺伝子組換え大豆が混ざっている場合 |
大豆(遺伝子組換え不分別)等 |
分別生産流通管理をしたが 意図せざる混入が5%を超える場合 |
遺伝子組換え表示制度 「任意表示」 | |
表示例 | |
分別生産流通管理をして 遺伝子組換えの混入がない場合 |
大豆(遺伝子組換えでない) 大豆(非遺伝子組換え)等が可能 |
分別生産流通管理をして 意図せざる混入が5%以下の場合 |
大豆(IP管理品) 大豆(分別生産流通管理済) 大豆(遺伝子組換え混入防止措置済) 大豆(遺伝子組換えの混入を防ぐため分別)等が可能 |
※(任意表示なので)原材料名のみを表示でも可 | 大豆 |
「意図せざる混入 が5%以下」とは?
現在、日本では大豆・とうもろこしに限り、適切に分別生産流通管理した場合でも「5%までの意図しない混入」が認められています。
これは、遺伝子組み換え作物と非組み換え作物を同じ流通ラインを使用しているため、コンベアーや倉庫内で遺伝子組み換えのものが意図せず混ざる可能性があるためです。
(※大豆・トウモロコシ以外の農産物には意図せざる混入物の定めはありません)
【用語説明】
※分別生産流通管理(IPハンドリング)
遺伝子組換え農産物と非遺伝子組換え農産物について、生産、流通及び加工の各段階で管理者の注意をもって分別管理し、それが書類により証明されていること
表示で分かる!大豆加工品の安心度
結局のところ、どのような食品表示の大豆加工品を選ぶと安心でしょうか?
(義務表示のある豆腐・油揚げ類、凍り豆腐、おから、ゆば、 納豆、豆乳、みそ、大豆煮豆、きなこなどの場合)
表示 | ||
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ |
大豆(国産) | 現在、国産大豆で遺伝子組換え大豆は、まったく流通していません。 つまり、「国産」と表示のあるものが一番安心できますね。 |
大豆(○○○産)(遺伝子組換えでない)等 | この表示は大手メーカーに多く、海外から「分別管理された遺伝子組換えを行っていない大豆」を輸入し使用しています。 不安を感じる方は、各メーカーのサイト等も合わせてご確認ください。 |
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大豆(IP管理品)(分別生産流通管理済)等 | 遺伝子組換え大豆の意図せざる混入(5%以下)があります。 遺伝子組み換え大豆を避けたい場合は、原料表記を見て国産の大豆を選ぶといいでしょう。 |
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遺伝子組換え食品表示のない場合 | メーカーの中には、国産大豆使用の商品と海外産大豆使用の商品を同じ生産ラインで製造しているところもあります。 仮に混入した場合を考慮し、原則何も書かないとするメーカーもあると予想できます。 この場合はわかりづらいですが、遺伝子組換え大豆の意図せざる混入の可能性(5%以下)があります。 |
おわりに
国産大豆と海外産大豆の違いはお分かりいただけましたでしょうか。
今回この記事を書くにあたり、大豆に限らずたくさんの遺伝子組換え食品が国内で流通していることを改めて実感しました。
食材の多くを輸入に頼らざるを得ない、日本の食料事情が背景にありますね。
遺伝子組み換え大豆が私たちの体や環境にどのような影響があるのかは、まだわかりません。
私たちは、商品を選ぶときに食品表示から読み取るしかできませんが、不安に感じられる場合は、国産大豆を使った商品をお求めいただくほかないでしょう。
この状況をふまえて、私たちが普段から口にする食品を再点検する必要性を感じますね。
マルマン醸造 常盤 慎太郎