【醤油の違い】種類・製法・地域による特性とおすすめ料理

醤油は日本の食文化に欠かせない調味料ですが、種類や味、合う料理の違いについてご存知でしょうか?
一般的にしょうゆといえば「濃口」を指しますが、実は種類が豊富。
今回は、濃口、淡口(うすくち)、たまり、白醤油など、お刺身に合う醤油や煮物が絶品になる醤油まで、毎日の食卓をさらに美味しくするための醤油の魅力をお伝えします。
さあ、一緒に醤油の奥深い世界を探検してみましょう!
醤油の種類による違い
しょうゆの基本の原料は大豆・小麦・食塩・麹ですが、醸造する地域により塩分濃度や熟成度が異なり、各地域ならではの独特な味わいが生まれます。
醬油を大きく分類すると、濃口しょうゆ、淡口しょうゆ(うすくち)、溜しょうゆ、再仕込しょうゆ、白しょうゆ、甘口しょうゆの6つに分けられます。
種類に応じて淡いものから濃厚なものがあり、色の濃さは熟成期間に比例しています。
料理に合わせてこれらを使い分ければ、味のバリエーションがさらに広がりますよ。
白醤油
【種類による違い】
白醤油:色白で風味豊か、素材を活かすしょうゆ
白醤油は、醤油の中で最も色が淡いのが特徴です。
普通のしょうゆが「濃い色」でドンと構えているなら、白醤油はその真逆。
大豆1割に対して小麦9割程度の比率で作られているため、醤油特有のうま味やコクが抑えられ、独特の香りと甘味が特徴です。
白醤油に出汁などを加えたものが「白だし」になります。
【使い方の違い】
白醤油におすすめの料理:煮物、吸い物、茶碗蒸し、炊き込みご飯、朝漬けなど
透明感ある白醤油は、料理の色を崩さずに旨みを引き立てる名わき役。
例えば、茶碗蒸しやお吸い物、白身魚の煮付けなど、繊細な料理にぴったりで素材の彩り豊かに仕上げてくれます。
炊き込みごはんに使うと醤油の色がつかず、「色は薄いけど味はしっかり」というギャップが魅力的。
バニラアイスに少しかけると塩アイス風になるのもおもしろいですね。
淡口醤油(うすくち)
【種類による違い】
淡口醤油(うすくち):繊細な料理の相棒、関西で人気
淡口(うすくち)醤油は、名前の通り薄い色のおかげで茶色くなりすぎず、素材の色合いを美しく演出してくれます。
しかし、濃口と比べて塩分濃度は1割程度高く、味も薄いわけではありません。
特に関西地方では人気で、淡口醤油は日本のしょうゆ生産量の1割強を占めています。
濃口醤油と淡口醤油の2本を揃えている家庭も多いですよ。
【使い方の違い】
淡口醤油におすすめの料理:煮物、お吸い物、だし巻き卵、白身の刺身、冷ややっこ、おでんなど
淡口醤油は主張しないしょうゆ味で旨味をプラスしつつ、全体を調和させるのが得意です。
しかも、塩分がやや高めなので、少量で味が決まるのも嬉しいポイント。
だしと合わせて控えめに使用し、低塩でだしのきいた料理に仕上げることができます。
塩やレモンの代わりにかけるのもおすすめです。
甘口醤油
【種類による違い】
甘口醤油:地域に根差したあま~い醤油
甘口醤油は、まろやかな甘さと豊かな風味が特徴で、九州地方を中心に人気です。
甘さが魅力的で、しょうゆの原料として認められている砂糖類、甘味料などを加えています。
甘口しょうゆが料理に使われると、コクと旨味が一気に増します。
※「日本農林規格(JAS規格)」には甘口醤油という定義はなく濃口醤油と分類されますが、
九州地方などの甘い醤油(濃口醤油の混合・混合醸造タイプの醤油)を甘口醤油と呼ぶことがありますので、
この記事では濃口醤油と分けてお伝えしています。
【使い方の違い】
甘口醤油におすすめの料理:焼きおにぎり、卵かけご飯、白身の刺身、納豆など
甘口醤油を煮物や照り焼きに使うと、甘くて美味しい味わいが食材に染み渡ります。
お刺身に少しつけるだけでも、甘みが魚の旨味を引き立てて、絶妙なハーモニーを生み出します。
さらに、料理の隠し味としても大活躍。
甘みのあるしょうゆなので、お子様が喜ぶ味に仕上がりますよ。
濃口醤油
【種類による違い】
濃口醤油:全国で引っ張りだこの大人気・万能選手
濃口醤油はどんな料理にもピッタリ合うため、日本のしょうゆ生産量の8割以上を占め、全国各地で親しまれているしょうゆです。
まさにしょうゆ界のオールラウンダー!
「濃口」といっても、6つの醤油の中では、色合いも塩分濃度も平均的。
深い色合いと豊かな風味がバランスよく、調理、卓上用と幅広く使える万能調味料です。
レシピなどに「醤油」と記載があった場合、濃口醤油のことを指します。
【使い方の違い】
濃口醤油におすすめの料理:焼き魚、納豆、つけかけ、煮物(豚の角煮・ブリ大根)、焼き物など
みなさんご存じの濃口しょうゆは、香ばしいかおりやうま味が持ち味。
「ぶり大根」や「豚の角煮」など、しょうゆが味付けのメインとなる、しっかりした味付けのお料理におすすめです。
特に、煮物、炒め物は、一気にコクと風味がプラスされます。
お寿司や刺身のつけだれに使えば、その濃厚な味わいが素材の旨味を引き立てます。
さらに、濃口醤油はお料理の色付けにも最適。
その美しい濃い色が、料理全体を魅力的に彩ってくれます。
マルマン醸造の「本醸造醤油」は濃口醬油! |
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再仕込醤油
【種類による違い】
再仕込醤油:上等な醤油、二度の熟成の奇跡
再仕込醤油は、醤油の世界でひときわ贅沢な存在です。
普通の醤油が水で仕込まれるのに対し、再仕込醤油は一度作った生醤油をもう一度原料にして仕込むという、手間と時間を惜しまない特別な製法で作られます。
その結果、価格はやや高めですが深いコクと豊かな風味を持つ「甘露醤油」、または「二段仕込み」とも呼ばれるようになりました。
再仕込醤油は山口県の柳井市が発祥といわれ、おもに山陰や九州地方で作られていましたが、現在は全国的に蔵元が点在しています。
【使い方の違い】
再仕込醤油におすすめの料理:刺身、冷奴、寿司、すき焼きの割り下など
濃厚な味わいの再仕込醤油は、特にお刺身やお寿司、冷奴など、おもに「つけ」「かけ」用に使われます。
例えば、新鮮なマグロのお刺身に再仕込醤油をちょっとつけてみると、濃厚な醤油の旨味が、魚の甘みを一層引き立てます。
また、そばつゆやすき焼きの割り下にしたり、おでんのスープ、料理の隠し味にもぴったりです。
溜醤油
【種類による違い】
溜醤油:旨味の爆発!とろみと香りが特徴的
溜醤油は、醤油の中でもひときわ個性的で濃厚な存在です。
通常の醤油よりも大豆の割合が多く、仕込み水は少なめのため、色が濃くてとろみと独特の香りが特徴です。
しかも、うま味の量は醤油の中でもトップクラス。
この醤油は、愛知・三重・岐阜など中部地方が主産地で、地元では「たまり」とも呼ばれ親しまれています。
【使い方の違い】
溜醤油におすすめの料理:寿司、刺身、照り焼き、佃煮、納豆など
溜醤油は、そのリッチな味わいから、刺身や寿司の付け醤油として特に人気です。
例えば、マグロのお刺身に溜醤油を少しだけつけると、その旨味が一層引き立ち、口の中でとろけるような至福のひとときが訪れます。
また、照り焼きに使うと綺麗な照りがでると好評。
ただし、濃口醤油に比べて風味や香りが強いので、使う時は量に気をつけてくださいね。
地域によるしょうゆの特性・違い
前述の通り、日本のしょうゆ生産量の8割以上が濃口しょうゆですが、醤油には地域性があります。
各地で地域の食文化と結びついたさまざまなしょうゆがつくられていて、独特の味わいを持つので、旅先で地元の醤油を使った郷土料理を試してみるのも楽しいですね!
出典:2022年しょうゆ情報センター「醤油の統計資料」
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北海道|北海道産小麦を使った「昆布しょうゆ」北海道のしょうゆはおもに本醸造の濃口醤油で、北海道で作られた小麦が使われています。 しょうゆの種類も全国的に一番普及している「こいくちしょうゆ」です。 さらに、昆布独特の粘りと旨み、香りが特徴の「昆布しょうゆ」も人気で、北海道の海の幸によく合います。 |
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東北地方|やや甘い混合の「濃口醤油」東北地方では、おもに甘めで混合の濃口醤油が使われています。 同じく混合しょうゆが主体の九州のしょうゆもとても甘いのですが、東北地方のしょうゆはそれほど甘くはありません。 東北地方は「濃縮つゆ」や「だししょうゆ」も地元に人気で、しょうゆ代わりに使う地域としても知られています。 |
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関東地方|すっきりした味わいの「濃口醤油」関東地方の醤油といえば本醸造のこいくちしょうゆ! 甘味料を添加しないすっきりした味わいが特徴的で、「濃口醤油」しか家に置いていない家庭も多いようです。 特に、千葉県の野田市や銚子市は醤油の名産地。 濃口醤油を使って、そば、天ぷら、うなぎの蒲焼き、にぎりずしなどの江戸料理が生まれたと言われるのも納得ですね。 |
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中部地方|濃厚な「たまり醤油」や素材を活かす「白醤油」愛知県、岐阜県、三重県を中心とする中部地方では、こいくちしょうゆの他に「溜醤油」と「白醤油」が愛されています。 たまりしょうゆは、「ひつまぶし」のたれや、「きしめん」「伊勢うどん」のつゆなど郷土料理に使われています。 しろしょうゆの主産地といえば愛知県碧南市ですが、白醤油の専業メーカーは全国でも1%程度で多くはありません。 |
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北陸地方|あまさが魅力の「甘口醤油」北陸の甘口醤油は、九州醤油ほどトロッとしていませんが、全国的に見ても甘めの醤油です。 富山湾でとれた寒鰤、富山湾の宝石とうたわれる白海老、ひらめ、いか、などのお刺身に甘口醤油は欠かせません。 イベス・ユベシなどといわれる寒天料理や煮物にも、甘口醤油でないと味が決まらないと重宝されています。 |
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関西地方|だしに合う「淡口(うすくち)醬油」+「濃口醤油」関西地方は、本醸造の濃口醤油と淡口醤油を使い分ける家庭が多いのが特徴です。 うすくちしょうゆは、江戸時代に兵庫県の龍野で生まれたとされています。 関西料理の出汁の効いた繊細な味わいを引き立てるため、色は薄くても旨味たっぷり。 大阪のたこ焼きやお好み焼き、京都のおばんざいにも欠かせない存在です。 |
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中国地方|手間暇かけた「再仕込醤油」や甘めの「濃口醤油」中国地方は、江戸時代に山口県柳井地方で生まれた再仕込醤油が人気です。 また、九州北部の甘いしょうゆが伝わったことにより、やや甘い混合の濃口しょうゆも多く使われます。 地元産の牡蠣エキスを使用した牡蠣しょうゆなど、しょうゆ加工品もつくっています。 |
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四国地方|地域により使う醤油が異なる四国地方は、地域によりしょうゆの特徴が分かれています。 九州に近い高知県や愛媛県では九州同様に甘味の強い混合しょうゆが使われ、鯛めしなどに使われます。 しょうゆの産地として知られている香川県では、関東と同様に甘味料を使用しない本醸造の濃口醬油が使われています。 また、讃岐うどんのつゆには混合のうすくちしょうゆが使われています。 |
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九州地方|あま~い「甘口醤油」や「再仕込醤油」九州地方は甘口醤油がご当地の味として根付いています。 宮崎県や鹿児島県といった九州南部は特に甘味の強い混合しょうゆが好まれている地域です。 刺身はもちろんのこと、豚の角煮や甘辛の煮物など、九州の味をぐっと引き立てます。 |
醤油の製法による違い「本醸造|混合醸造|混合」
基本的な醤油の作り方を簡単にお伝えすると、大豆と小麦を蒸して混ぜ、麹菌を加えて発酵させます。
発酵後、塩水を加え、数ヶ月熟成させます。
最後に、圧搾して液体を取り出し、加熱処理して完成です。
原材料などが書かれているラベルに、「本醸造」「混合醸造」「混合」の3つの製法が記載されています。
この違いをご存じでしょうか?
これは、原材料にアミノ酸液を使うか、またその加えるタイミングなどによる分類です。
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本醸造方式「本醸造」は、醤油の王道。日本で生産されているしょうゆの約9割が本醸造方式です。 原料となる大豆と小麦を、麹菌や酵母、乳酸菌などの微生物の力によって、じっくり発酵・熟成させる方式です。 時間と愛情をたっぷりかけて熟成されるので、深いコクと豊かな風味が生まれます。 まさに職人の技と自然の恵みが織りなす一品。 色、味、香りすべてにおいてバランスがとれていると評価されています。 |
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混合醸造方式「混合醸造」は、本醸造で作ったもろみに、アミノ酸液(または酵素分解調味液、あるいは発酵分解調味液)を加え、熟成させる方式です。 発酵の力に少しプラスアルファをすることで、短時間で香り豊かな醤油ができあがります。 (アミノ酸液とアミノ酸は別物です) |
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混合方式最後は「混合醤油」。 本醸造方式でできた「生揚げ(きあげ)しょうゆ」に、アミノ酸液(または酵素分解調味液や発酵分解調味液)を加える方式です。 発酵・熟成はせず、甘味料を併用して使うことが多いため、甘味が強いしょうゆになります。 九州などでよく使用される醤油です。 |
マルマン醸造の「本醸造醤油」は福島県産! |
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しょうゆの種類や仲間たち
大人気のだし入りしょうゆ、めんつゆ、ポン酢しょうゆなどは、しょうゆをベースにしてうま味成分や果汁などを加えた加工品です。
「しょうゆ風調味料」「しょうゆ加工品」などと表示されています。
だししょうゆ / 昆布しょうゆ
しょうゆにかつお節や昆布などのだしをブレンドしたしょうゆです。だしを取る手間が省けて時短になるため、忙しい方におすすめの調味料のひとつです。
めんつゆ
出汁と醤油とみりん(または日本酒)、砂糖をベースに作られた調味料です。だし醤油に比べて砂糖やみりんが多く含まれるので、甘みが強く感じられます。
ポン酢しょうゆ
醤油ベースのポン酢にみりんや鰹節、昆布などの出汁の旨味成分を加えた合わせ調味料です。いわゆる「味ぽん」です。
粉末しょうゆ
しょうゆを粉末化したもので、インスタントラーメンのスープや菓子などの原料にも使われています。
※魚醤(ぎょしょう)
JASの規定では、しょうゆは大豆・小麦などの穀物原料を使用することとされています。
魚醤(ぎょしょう)は、魚を塩と共に漬け込み醗酵させた醗酵調味料なので、しょうゆに分類されません。
しかし、現代のしょうゆのルーツとされる醤(ひしお)は、穀類や魚、肉などを発酵させてつくった発酵食品の総称であったことから、魚を原料とした「魚醤」もしょうゆの仲間といえます。
日本には秋田県の「しょっつる」 、石川県の「いしる」 、香川県の「いかなごしょうゆ」といった魚醤があります。
マルマン醸造の「食通のつゆ」 |
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おわりに
日本の食卓に欠かせない醤油、その奥深い世界に少しでも触れていただけたでしょうか?
濃口、淡口、溜、再仕込、白、甘口など種類の違いや製法の違い、そしてそれぞれの地域ごとの特色。
まるで日本各地を旅しているような気分になったかもしれませんね。
次に料理をする時、ぜひ「今日はどの醤油にしようかな?」と考えてみてください。
新しい発見で、料理の幅がぐっと広がり、食卓がもっと楽しく豊かになること間違いなしです!
ぜひ、醤油で美味しい食生活を楽しんでくださいね。
マルマン醸造 常盤 慎太郎